日記を始めても続かない。その一方で、「続けるほど価値が出る」とよく言われる日記の形があります。連用日記、なかでも有名なのが5年日記です。1ページに同じ日付の欄が何年分も並んでいて、毎年そこへ書き足していく——という、少し変わった作りの日記です。
この形のおもしろさは、書く量がとても少ないこと、そして去年・一昨年の同じ日が、すぐ上の行に並んで見えることにあります。この記事では、連用日記とは何か、3年・5年・10年のどれを選べばいいのか、途中で力尽きないコツ、そして紙とアプリそれぞれの向き不向きまで、正直に紹介します。
連用日記とは、同じ日付の欄に、複数の年の記録を重ねて書いていく日記のことです。ふつうの日記が「1日1ページ」「日付順に1年で1冊」なのに対して、連用日記は「6月13日」のページに、今年の6月13日、来年の6月13日、再来年の6月13日……と、年をまたいで同じ場所に書き足していきます。
なかでも5年日記がいちばん有名です。1ページが5段に区切られていて、1段あたり数行。今年はいちばん上の段に書き、来年は2段目、というふうに使います。5年が一周すると、1ページの上から下まで5年分の「同じ日」が並ぶ——これが連用日記のいちばんの見どころです。
3年分の3年日記、10年分の10年日記もあります。年数が多いほど1日に書ける量は短くなりますが、そのぶん何年も並べて読んだときの厚みが出ます。
「連用」は、同じ場所を年をまたいで連ねて用いる、という意味です。文具としての連用日記は古くからあり、日付欄が固定で印刷されているため、何日か書き忘れても次の日付からまた書ける作りになっています。日付を自分で書かない——この小さな違いが、続けやすさにけっこう効いてきます。
連用日記を続けた人がよく口にするのが、「去年の今日、自分は何をしていたんだろう」という問いに、ページを開くだけで答えが返ってくる感覚です。今年の欄に書こうとすると、否応なく去年・一昨年の同じ日が目に入る。毎日が、ささやかな読み返しの時間になるわけです。
これは、ふつうの日記ではなかなか得られない体験です。1年で1冊の日記だと、去年の同じ日を読むには別の冊子を引っ張り出してこないといけません。連用日記は、比較を「同じページ」が肩代わりしてくれる。だから自然と、季節のめぐりや、毎年なぜか同じ時期に気分が沈むことなどに気づきやすくなります。
去年の6月、自分も同じことで悩んでいた。——そう気づくだけで、いまの悩みが少し小さく見えることがあります。
読み返すこと自体の意味については日記の読み返し方でも触れていますが、連用日記は「読み返そう」と身構えなくても、書くついでに毎日それが起きるのが利点です。
連用日記が続きやすいと言われるもうひとつの理由は、1日に書ける量が物理的に少ないことです。5年日記なら1日数行、10年日記ならもっと短い。白いページを前に「ちゃんと書かなければ」と気負う余地が、そもそも紙面に用意されていません。
これは、日記が続かない人にとって大きな助けになります。長く書こうとすると手が止まる、というのは多くの人が経験するところです(日記が続かない理由でも詳しく扱っています)。連用日記は枠が小さいことを最初から認めている形で、その点で一言日記とよく似た思想を持っています。
「数行でいい」と決まっていると、迷う時間が減ります。天気と、その日の出来事をひとつ、ひとことの感想。それで1日分が埋まります。書く量に上限があることは、続けるうえではむしろ味方です。
連用日記には年数の選択肢があります。最初の1冊にどれを選ぶか迷う人が多いので、目安を挙げておきます。
迷うなら、短めから始めるのがおすすめです。3年日記を1冊やりきってから5年に進む、という順番なら、自分のペースもわかった上で長い冊子に挑めます。最初から10年日記を買って、白い欄が10年分残っているのを負担に感じてやめてしまう——これがいちばん避けたいパターンです。
「続くほど価値が出る」という連用日記の良さは、裏を返せば途中でやめると価値が出にくいということでもあります。最初の数か月をどう越えるかが肝心なので、力尽きないためのコツを挙げます。
日記を続ける工夫そのものは、形式を問わず共通します。日記の書き方の記事に、続けるための小さなルールをまとめています。
ここは正直に書きます。「去年の同じ日が、すぐ並んで見える」体験は、紙の連用日記がいちばん得意です。決まったページを開けば過去の同じ日付が物理的に並んでいる、という設計は、紙の連用日記の本質的な強みで、アプリがそのまま置き換えられるものではありません。手で書く時間そのものに、1日を区切る落ち着きがあるのも、紙ならではです。
一方でアプリには、紙にはない強みがあります。書き忘れを通知で防げる、たまった記録を自動で集計できる、後から検索や編集ができる。手書きのノートだと「今月、調子はどうだったか」を知るには全ページを読み返すしかありませんが、記録が数えられる形なら、傾向はひとりでに見えてきます。
つまり、向いている人が分かれます。季節のめぐりや「去年の自分」をじっくり味わいたいなら、紙の連用日記。書き忘れが心配で、たまった記録から自分の傾向を知りたいなら、アプリ。どちらが偉いということはなく、目的次第です。アプリ側の選び方は日記アプリの選び方にまとめています。
ちなみに、両方を併用する人もいます。紙の連用日記でその日を味わい、気分の浮き沈みのような数えられる記録はアプリ側に任せる、という分担です。書く日記と数える記録は、もともと相性が良いものです。
連用日記の根っこにある考え方は、「続けるほど価値が出る」ということです。1日分は小さくても、時間が積み重なると、ほかでは得られない厚みが生まれる。これは、記録というものの本質に近い話です。
この「積み重ねが価値になる」という思想は、形を変えても受け取れます。たとえば、毎日の記録が積み木のように積み上がって、連続日数や累計が目に見える形なら、文章を読み返さなくても「続いてきた事実」が一目でわかります。去年の同じ日と並べて読むのは紙の連用日記の役目、たまった記録から傾向を返すのはアプリの役目——というふうに、得意を分けて考えると見通しが良くなります。
大切なのは、どの道具を使うにせよ、1日のハードルを低く保つことです。連用日記の数行も、タップひとつの記録も、続けやすさの理由は同じ「軽さ」にあります。記録を残すスタイルは人それぞれなので、自分に合う形から始めてください。
大丈夫です。連用日記は日付が印刷されていて、どの日からでも書き始められます。1月1日からきっちり始めなければいけない、という決まりはありません。思い立った日の欄から書き始めれば、そこからその日があなたの起点になります。
迷うなら、まずは短めの3年日記か、定番の5年日記です。1日に書ける量と、続いたときの見ごたえのバランスが取りやすいからです。10年日記は厚みが格別な一方で長丁場なので、日記をすでに何年か続けた経験がある人に向いています。
続けられます。連用日記は日付が固定なので、数日空いても次の日からまた書け、後から過去の欄を埋めることもできます。書く量も1日数行で構いません。「天気だけ」「ひとことだけ」の日があっても、記録としてはちゃんと機能します。空欄を失敗と数えないことが、長く続けるコツです。
連用日記の「続けるほど価値が出る」という思想を、別の入り口から受け取れるアプリを作りました。気分を5段階から選び、やったことをタグでタップ。書きたい日は一言だけ残せます。記録は積み木のように積み上がり、連続日数と累計が一目で見えます。週ごとに「散歩があった日は、気分が+0.9」のような、あなたのデータの事実が返ってきます。去年の同じ日を味わうのは紙の連用日記が得意ですが、たまった記録から傾向を返すのはアプリの得意分野です。励ましません。採点もしません。
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